◆緊張しに行くんじゃない。「好きなことをしに行くだけだよ。」 /0010

「好きなことをしに行くだけだよ。」さらっと一言、暗いステージ脇で投げかけられました。8年前にその言葉を言ってくれた人は、現在は在京オケ首席のフルーティスト。今でこそその人の言わんとする意味が分かるようになりましたが、本番直前に緊張している私にとって、単純に気持ちを切り替えられる程の余裕はまだありませんでした。暗い舞台袖から、これから本番が始まるというときに、音楽と初心に戻り、ステージへ歩き出す言葉です。

クラリネット宮前和美


2007年

舞台裏の暗く影のある場所から、白い光に包まれるステージに上がっていく。
黒い衣装に着替えて、楽器を持って、リードケースとスワブも持って、準備は整う。
後はそこからステージに向かって歩き出すだけ。
もうすぐ鳴り出すオーケストラ。

「音程」「アタック」「求められるクラリネットの音色」「1stとのアンサンブル」「楽譜の解釈とそのパッセージ」「指揮者の指示」などなど、気にしなきゃいけない事はきりが無い。
あぁ、このままその世界に足を踏み込んで行って成功するのか。

 

一瞬一瞬で命の一部を賭けているような緊張感を味わって、真剣勝負の音の賭が最後まで続いていくのが、オーケストラで演奏する事だと思わせられる。
周りのレベルが高ければ高いほど。
もちろんそれだけじゃないけれど。
その賭に負けないように、日々練習する。
基本的な奏法がしっかりしていれば、そのある意味賭の勝率は高くなることを実感する。

楽器を操ることを何にも心配しないでいれるなら、自信を持って音を出せるし、全然違った演奏が出来るのにって、クラセクションの二人で冗談交じりに笑って言い合っていた。

そんな時。
さらっと一言、暗いステージ脇で投げかけられた。

 

「好きなことをしに行くだけだよ。」

 

そう…なの?そうだっけ?
これが大前提にその他の色々な神経質な事がある?
好きだからだけで、そんな気軽に舞台に立っていいんだっけ?
上手い人や一流のプレーヤーは本気でそう思って舞台にいるの?

そうなのかもしれないと実感したら、今まで恐い思いをしていた意識の使いどころを、違ったところに持っていく感じを味わった。こんなに長く一つのことを続けていると、好きだかなんだかさえ意識することもなくなってたけど、初心はそれか。心に留めて日々精進。

 


2015年

ここまでの文章は2007年に私が書いたものですが、

音楽は、
恐いことでも、
緊張することでも、
劣等感を持つことでも、
辛いことでも、
自分を否定することでも、
人の評価の為に吹くことでもない。

言葉に表すと本質が逃げてしまう感じがとてもするけれど、音楽はあらゆるネガティブな事とは真逆の所にある。

その時もらった言葉を、アレクサンダー・テクニークをこの2年学んだ自分は、本来持ち込む必要のないものを持って舞台に立ってきた自分に、今こそ言える。

「好きなことをしに行くだけだよ。」

 

できることならあの時もらった言葉のニュアンスそのまま文字でも伝えたい。

演奏の仕事では、その要求や質に答えている必要が当然あるのだけれど、楽器が完璧に操れるかどうかということと、舞台に立つ根本的な資格や意味とは別次元である。

それをプレーヤーとして奥底できちんと知って、「好きだから」という言葉を、当たり前のように選べ、同業者にも抵抗なく伝えられる自分でいるのか。

舞台に立つということが、演奏者自身の生活においてどんな存在なのかは千差万別だけれど、その言葉が持っている意味は、プロだってアマチュアだって違いはない。

 

単純に、簡単に、シンプルに、楽器を吹き、舞台に立つ。

舞台に出ていくその瞬間、私は、「好きなことをしに行くだけ」、なのだ。

 

 

クラリネット宮前和美

 


【忘れられないレッスンシリーズ】

1、◆アンサンブルが乱れたら、「2」だけ多く自分を褒めること。/0009

2、◆多くの音楽家が教わってこない、パフォーマンスのこと /0004

3、◆「形容詞」で表現しがちな、音楽家の常識をくつがえせ! /0030




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 こんにちは!

アレクサンダー・テクニーク教師、クラリネット奏者の宮前和美です。

***

クラリネット専門のアレクサンダー・テクニークの教師は、

国内在住ではまだまだ少なく

今はバジルさんの活躍で金管楽器や吹奏楽部で

レッスンを受講している人が増えてきていますが、

これから木管楽器、クラリネットの世界にもアレクサンダー・テクニークが広がり、

幸せな楽器人生を過ごせる人が増えるよう、

アレクサンダー・テクニークからの視点やアイディアをプラスして

レッスン活動をしています。

都内、横浜中心にレッスンしていますので、

悩みの大きさ、レベル、経験関係なく、

一緒に上達していけたらと思っています♪

アレクサンダー・テクニーク教師新米な私の経験値を増やすつもりでも(笑)、

しばらくの間はレッスン見習い価格でいますので、

是非レッスンにいらしてください♪

みなさまのこれからの演奏のお役に立ちますように♪

***


【レッスン】

⚫︎個人レッスンは、主に横浜・都内で行っています。

⚫︎45分レッスン

⚫︎5,000円+スタジオ代

⚫︎お問い合わせフォームより、お申込み承っております♪

 

(吹奏楽部・管弦楽部の指導、出張も致します。)

2 Comments on ◆緊張しに行くんじゃない。「好きなことをしに行くだけだよ。」 /0010

  1. 初めまして!
    FBでシェアされていたあなたの、このブログを拝見し、とてもいいお話を読ませていただきました。
    吹奏楽の部活をやる中高生に是非読ませたいと思いました。
    緊張しに行くんじゃない。「好きなことをしに行くだけだよ。」の日のカキコミを部員限定で(彦根市立鳥居本中学校、現在12名でアンコンとクリスマスコンサートに取り組んでいます)プリントして、使わせていただけたら、と思います。
    差し支えありましたらご連絡をお願いします。
    小杉卓也

    • 小杉様
      ご連絡ありがとうございます!お返事が遅くなりまして申し訳ありません。
      吹奏楽部の部員の皆さんに読んでいただけるなんて嬉しいです。是非シェアしてお使いください!
      私も中学から吹奏楽でクラリネットを始めて今に至りますが、初心を思い出して、それだけで舞台に立てたら、全てが上手く回り始めるのだろうと思っています。
      アンコン、クリスマスコンサート、是非楽しく演奏できますように♪
      ご丁寧にありがとうございました!

      宮前和美

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