◆アレクサンダー・テクニーク。そういえば、どうやって出来たの? /0027

「音楽マジック」という言葉、聞いたことありますか?『舞台での姿や音楽があまりに格好いいので、それ以外の性格や人間性のマイナスが帳消しになってしまうこと』。アレクサンダー・テクニークの創始者F.M.アレクサンダーもそんな一人でした。ダンディーな俳優ではありましたが、著書を読むと、かなり偏屈で頑固な職人堅気な性格をもった一筋縄ではいかない変人だと伝わってきます。そんな人から、アレクサンダー・テクニークはどうやって出来たのでしょうか?この人の歴史を知ると、アレクサンダー・テクニークが、なぜ楽器演奏に役立つのか分かってきます。

クラリネット宮前和美


もっと上手く吹きたい、と思うのと同じ思い。

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F.M.アレクサンダーその人は、タスマニア地方の田舎生まれ、イギリスという都会に出てきてスーツをビシッと纏い、スラッとした姿が格好いいダンディーな紳士でした。

職業は俳優(朗誦家)。

成功していましたが、ある時から声が出なくなってしまい、医者に診てもらっても原因が見つからず、治療方法はないと言われてしまい、俳優生命を断たれる状況になってしまいました。

誰にも頼れず、自分で自分の声の問題を解決しようと研究を始めました。

楽器の練習と同じです。

 

どうしても、舞台で演奏をしたい。

もっと上手く吹きたい。

あきらめられない。

 

そうして、声の問題に何年も向き合い、医者がお手上げだった改善方法を見つけてしまい、また朗誦ができるようになりました。

アレクサンダーが声の問題を解決していく中で、独自に発展させた呼吸法や方法は、自分だけではなく、世の中の他の人にも役立つと確信し、レッスンをするようになりました。

そのうち医学界や富裕層から支持され、生徒や弟子がたくさん集まり、100年後の今では海外の芸術大学では授業カリキュラムが作られ、日本でもアレクサンダー・テクニークが広がっています。

 


凝り性でかなり癖のある頑固でマニアックな変人、F.M.アレクサンダー氏。

 

アレクサンダーの生涯は自伝にしたら山あり谷あり、最後には成功を掴むストーリーですが、そんなダンディーさや成功ストーリーとは裏腹に、今回私が読んだ『自分の使い方(The Use of the Self)』という著者としては、かなり難ありの人でした。

まどろっこしい語り口で、分かりにくい説明と、長々と途切れない文節が続いている独特な文章。

私の中でF.M.アレクサンダー像は、かなり偏屈で、頑固な、職人堅気な性格をもった、一筋縄ではいかない人と伝わってきました。

 

私がこれまで出会った人の中で、似ているタイプが思い当たらなくもないので、アレクサンダーの周りの人がどんなに振り回され、時に人間関係でぶつかり、問題が起こったことかと想像しました。

 

私個人的な感覚ではありますが、そういう人に限って、ある特定の分野において、問題が帳消しにされるくらい、魅力的であることが多いように思います。

舞台での姿や音楽があまりに格好いいので、それ以外の性格や人間性のマイナスが見えなくなり、逆に魅力的に思えるという、俗に言う「音楽マジック」のような。

 

展開する持論に説得力があったり、レッスンで恩恵を受けることがあったり、一部の人にとって、彼自身の存在や才能や能力が、どんなに惹きつけられるものだったのか、アレクサンダー氏のレッスンについてこれまで語られているもの端々を繋ぎ合わせ、今回の文章の中からもアレクサンダーの本人像を感じていました。

歴史上の偉大な音楽家と実際会ってみたらと想像したときに、私はきっと尊敬し惹かれていたはずだという予感があるのですが、この人も同様に人を惹きつける力があったと思います。

 


『自分の使い方』を間違っているんだ。

 

今回私が読んだF.M.アレクサンダー著書『自分の使い方』という本は、「アレクサンダー・テクニーク」が、どういう過程で出来上がっていったのかという中身とストーリーが分かります。

アレクサンダーにとっては「出ない声」、私にとっては「緊張からくる手の震えと体の固さ」を、なくしたい。

願いや望みが、そのあとの問題解決に至るエネルギーになります。

 

アレクサンダーが大切な商売道具である声が出せなくなって、始めに考えたことは、

「自分が自分で、声を上手く出せないようにしながら、声を出そうとしているのだ。」ということでした。

自分の身体の使い方を、なにか間違ってるから、上手くいかない。

 

アレクサンダーは凝り性であり奇人のマニアックな部類の人間だからこそですが、鏡を何時間も見て、自分が声を出すときに何をしているのか、何時間も、何ヶ月もずーーーっと観察をし始めたと書いてありました。

 


アレクサンダー・テクニークの原理である、『頭と脊椎の関係性』を発見した!

 

 

すると、だんだん目が肥えてきて、声を出そうとする瞬間に、

「頭を後ろに押し下げている」

「喘いだような呼吸をしている」

「足の指で地面を掴んで立っている」

というようなことに気づきました。

 

でも、何が原因でそうなっているのか、何が一番始めに起こってそうなっているのか分かりませんでした。

 

そこで、どれかを止めながら声を出したら上手くいくのかもしれないと、これも飽きずに何度も試しました。

すると「頭を後ろに押し下げないで」声を出そうとすると、他の2つが上手くいき、結果声も良くなると分かってきました。

 

それが、アレクサンダー・テクニークの原理である『頭と脊椎の関係性』の発見に繋がります。

 


やってるつもり。

 

やった!

「頭を後ろに下げている」のだから、それをやめればいい。

いつも「頭を前へ上に」もっていけば上手くいくんだ!!

これで一件落着。

もう声の問題は起きないだろう!

 

と思っていたのに、アレクサンダーはこの問題が解決していなかったことに、しばらくして気づきます。

 

頭を前へ上にしてしばらく声を出しているつもりだったのに、鏡を見てみると、全然そうしていない!

自分では絶対そうしている感じがするのに、その自分の判断が間違っていて、評価をしている自分に頼れなくなり、愕然とします。

絶対やれていると思うのに、そうしていない。

やっているつもりの自分が、どうやって、正しいことをしているか、間違ってしまっているのかを判断していけばいいんだろう?!

 


アレクサンダー・テクニーク、7つのポイント

 

その課題に、何ヶ月も悩み、悩み、悩みまくり、その結果、

 

1、「これで正しくできている思う、自分の感覚の判断はあてにならない。」

2、「今まで通りの習慣や癖をやめるには、今までと同じ判断基準を採用していたら、違う結果は起こせない。」

3、「違和感があり、変で、間違っていると感じることが、新しいことをしている何よりの証拠である。」

4、「声を出したいと思う瞬間に、習慣が結びついている。」

5、「声を出そうという意図を持たないようにできると、違う結果が起こせる。」

6、「一つづつ順番に色々なことが起こり、それを一つに全てまとめて、声を出すという一連の動作としているから、その手順を計画する必要があり、一つも省くことはできない。」

7、「自分の使い方が変われば、身体の動きは変わる。(心と体は一体。)」

 

そんなことを長々ーーーーーーーと、まどろっこしく、その苦労とともに、知識人風に何度も語っていました。

そして、声の問題がほとんどなくなり、また朗誦ができるようになると、それが評判となり、色々な人が頼って、声や呼吸のアドバイスのためレッスンするようになりました。

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今後の人類に必要なもの。

 

でも、またアレクサンダーには、疑問が湧いていきました。

声の悩みを持って、色々な人が自分を頼って来るけれども、己の使い方をより良くし、声の問題をなくしていく過程は、誰でも同じなのだろうか?

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声や呼吸のレッスンを始めて、生徒が自分と同じ反応や、全く同じ失敗をしながら解決に至る様子をみて、誰もが同じく、自分の使い方を分かっていないのだと、実感した様子が書いてあります。

 

アレクサンダー自身が数年かけて研究した、「不要な習慣をやめる方法」、「自分の使い方」のアイディアは、誰でも、どんなときにでも役立つツールとして使える!

医者でも解決できず、分からなかったことを、自分はレッスンし解決したり良くしたりしている。

医療を超えて、今後の人類に必要なものなのだ!!

 

アレクサンダー自身の表現では、教育的にも人類の歴史的にも人に必要になっていくものだと、著書の中で医者の推薦文も引用しながら力説しています。

 


先人と同じ道を辿らなくてもいい。

 

現在は、アレクサンダーが辿ったマニアックな、気の遠くなるようなストーリーを、同じ期間をかけて、同じように辿らなくても『自分の使い方』の理解が進むよう、アレクサンダー・テクニークの先生たちが、そのサポートをしてくれます。

楽器も、声も、ヨガも、芝居も、乗馬も、スポーツも、立つのも、歩くのも、肩こりも、物忘れも、怒りやすいのも、病気も、何でも、『自分の使い方』が関わってきます。

 

次回は、アレクサンダーが声の問題を解決したストーリをそのままそっくり、私の「あがり症問題」に当てはめてみたいと思います。

思考がどれだけ、自分の使い方や動きやパフォーマンスに関わるのか。

 

こちら↓

「アレクサンダーさん、私のあがり症の悩み、答えてくれる?」

 

 


 

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