◆アンサンブルが乱れたら、「2」だけ多く自分を褒めること。 /0009

アンサンブルが乱れたら、自分が基準となって吹く?それとも誰かに合わせる?その間で、最終的にどうしようか迷ったら、私は、日本を代表するオーケストラの元首席奏者であったクラリネットの先生の言葉を思い出します。アンサンブルが乱れたら、「2」だけ多く自分を褒めること。その「2」という数字の意味を知り、高みに至る音楽家の探求と熱量に圧倒されました。忘れられないレッスン、三つ目です。

クラリネット宮前和美

 


アンサンブルが乱れた時

 

 「アンサンブルが乱れた時、皆が自分のせいにして合わせようとしていたら、 音楽が音楽として成り立たないんです。」

 

日本を代表するオーケストラの、元首席クラリネット奏者の先生から聞いた言葉です。

 

アインザッツや音程、発音、表現が上手くいかなかった時、皆が皆、自分が原因だと、周りの人に合わせようとしたら、お互いどんどん合わせに入り、とても消極的な音作りになり、その先にある、大切な音楽が生まれません。

逆に、自分は絶対で、自分の正しさを信じ、他人に寄せない頑なな吹き方は、ソリストなら時にあり得ても、作り出される音楽は、アンサンブルとは言えなくなります。

自分に自信を持ち主張しながら吹くことと、自分を疑いながら柔軟に吹くことは、どちらも必要で、どちらかに偏り過ぎても上手くいかなくなってしまいます。

自分を主張することと、人に寄せて合わせにいくこと、

 

「その二つの間に真実がある。」

 

二つの間でバランスを取るのは難しく、大抵どちらかに偏ってしまうことが多いけれど、本当のアンサンブルが成立し得る真実がそこにあると。

 

 


 

自己否定と似て非なるもの

 

何年もかけて修得していくようなことも、超繊細で敏感な相手との高度なアンサンブルのやり取りの存在も、包み隠さずその先生は伝え、さらに周りに合わせることに偏りがちな私の演奏も見透かしていたかのようでした。

 

この言葉を聞いたのは、私がアレクサンダー・テクニークに出会う前で、上達するには自分の演奏に駄目出しを続けることが必要だと、当たり前のように考えていた頃です。

演奏途中に、ハーモニーや音程などが、許容範囲外だと判断した瞬間、音楽的な才能も耳もテクニックもない、下手な自分が、アンサンブルを乱しているのだと咄嗟に決め、すぐ周りに合わせにいくという習慣が、私の中にありました。

自分を信用せず吹くこと、駄目出しから発生したテクニックの一つです。

やっていることが不健康だとは全く思っていなかったのですが、実際すべきことは、『自分を信じ確実に吹くこと』と、『自分を律し疑い柔軟に吹くこと』の相反することとのバランスの取り方であり、私が実践していた取り組みは、その先生が目指し、現場で実際に考え、実現しようとしていたアンサンブルに於ける柔軟な対応とは、似て非なるものでした。

 

 


「2」だけ多く。

 

日本トップのオケで第一線にいたプレーヤーが、何年も掛けて考え尽くし、気が遠くなるほど色々な方法で本番に挑み、身を持って経験し実感して、辿り着いたはずの、アンサンブルに相対するときの極意や心得、滅多に知ることはできないと思っていたオケマンの音楽の本音。

「その二つの間に真実がある。」とサラッと簡単に発言したように聞こえた言葉の中の極意が、私には手に負えない圧倒的な真意として迫り、心は鷲掴みにされていたのに、次の言葉は、もっともっと思いっきり強烈な色の閃光を放ったような鋭さで、心に刺さりました。

 

その先生は、講義を続けながら言いました。

誰かと音楽する上で、自分を褒めることと、けなすことどちらも持ち合わせる必要がありますが、それはバランスが取れ均衡を保った五分五分の割合ではありません。

50対50のうち、けなす方を「1」少なくし、その分「2」だけ多く、自分を褒めてアンサンブルをしていくのです。

「2」だけ多く、自分を信じて褒める。

 

「51褒めて、49けなす。」

「その一生で。」

 

 


想像を超えた果てしない探求と熱量

 

なんで、どうしたら、こんな言葉が出てくるんだろう!

遥か遥か先にいるように思えるプレーヤーなのに、それでもなお現状に満足することなく、終わりなき音楽の旅路を、より素晴らしい方へ進み続け、邁進している。

褒めると対になっている、けなすという言葉には、自分を貶めるようなニュアンスがありますが、自己否定や自己卑下とは全く意味を異なり使うプレーヤーの覚悟があり、想像を超えた果てしない探求と熱量がすぐそこに感じられました。

「その一生で。」という言葉の、 一生そうしていくという信念にも、そして、51対49という数字を選べる繊細さにも圧倒され、何かに書き残しておこうとしなくても、その瞬間で覚えてしまったほど印象的な言葉でした。

 


 

アレクサンダー・テクニークの先生のサポート

 

この心揺さぶられる言葉の大きな影響を受け、「褒める」ことを取り入れて方向転換をしようとしても、思考の習慣は根深いもので、いつでも駄目出しをする自分が出てきました。

どうやって自分を褒めるのを増やし、どうやってけなすことを減らせるのか?

これはまさに、そのあと出会ったアレクサンダー・テクニークの先生たちのサポートなくしては、改善はあり得ません。

 

褒め慣れていない自分にとって、少しでも自分を認めると、自己慢心になっていはしないか、自信過剰ではないか、自己否定の安全網がなくなってしまうという怖さや、劣等意識からくる自分へ対しての呵責や後ろめたさなど、新たな自分になろうとしているのに、巧妙な手口で、自己否定をする思考は入り込み、それは阻まれてきました。

でも、アレクサンダー・テクニークの先生たちは、私に起きる僅かな変化にいつも気づき、見逃さず、変化が起きた、良くなっている、気づくポイントは今だった、今上達したのにすっ飛ばして次に進もうとした、きちんと上達を認めなさい、とある時には立ち止まり 、考え方のヒントを様々な側面から与えられ、色々な先生に気づかせてもらいながら一年くらい過ごしました。

 

今でもまだ、自分を褒めるのは苦手ですが、100に近く自分をけなすべきと思っていた以前から考えると、大分割合が変わってきたと思います。

 


音と同じく、言葉も響く

 

物事を極めにいこうとする、プロフェッショナルな人の言葉は、時に、人に伝える能力や威力も超一流で、その人が奏でる音楽と一緒で、心に届き、感動を生み、人に影響を与えます。

そして、音楽もスポーツも芸事も経営もありとあらゆるジャンルを問わず、その道の一流の人から聞くある特定の話が、他の分野にも共通し、参考になったり教訓として学べたりする時が多くあります。

この先生の話はオーケストラの管楽器セクションにおける演奏についてでしたが、ほんの些細なことで白黒つけたり、0か100かどちらかに偏ったりした自分になった時にバランスを取ることを思い出したいし、空気を読んで自分が遠慮しすぎたり、誰かに合わせ自己主張をできない時や、逆にこだわりがあるからこそ主張をしすぎたり、一部の正しさしか許せず自分を正当化したりする時に、自分が考えているものとの二つの間に真実があるかもしれないと、柔軟でいたいと思います。

 

自分を「2」多く褒める。

51褒めて、49けなす。その一生で。

 

そう低く静かに言う声。

あの時のレッスン室の景色や空気、その先生の声と言葉は今も心に響き続け、もう何年もずっと忘れられません。

 

 

クラリネット宮前和美

 

 


【忘れられないレッスンシリーズ】

1、◆多くの音楽家が教わってこない、パフォーマンスのこと /0004

2、◆楽譜を見るとき、楽器の眼鏡を掛けていませんか? /0008

 


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【レッスン・お問い合わせ】

 こんにちは!

アレクサンダー・テクニーク教師、クラリネット奏者の宮前和美です。

***

クラリネット専門のアレクサンダー・テクニークの教師は、

国内在住ではまだまだ少なく

今はバジルさんの活躍で金管楽器や吹奏楽部で

レッスンを受講している人が増えてきていますが、

これから木管楽器、クラリネットの世界にもアレクサンダー・テクニークが広がり、

幸せな楽器人生を過ごせる人が増えるよう、

アレクサンダー・テクニークからの視点やアイディアをプラスして

レッスン活動をしています。

都内、横浜中心にレッスンしていますので、

悩みの大きさ、レベル、経験関係なく、

一緒に上達していけたらと思っています♪

アレクサンダー・テクニーク教師新米な私の経験値を増やすつもりでも(笑)、

しばらくの間はレッスン見習い価格でいますので、

是非レッスンにいらしてください♪

みなさまのこれからの演奏のお役に立てますように♪

***


【レッスン】

⚫︎個人レッスンは、主に横浜・都内で行っています。

⚫︎45分レッスン

⚫︎5,000円+スタジオ代

⚫︎お問い合わせフォームより、お申込み承っております♪

(吹奏楽部・管弦楽部の指導、出張も致します。)


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