アンサンブルが乱れたら、自分が基準となって吹く?それとも誰かに合わせる?その間で、最終的にどうしようか迷ったら、私は、日本を代表するオーケストラの元首席奏者であったクラリネットの先生の言葉を思い出します。アンサンブルが乱れたら、「2」だけ多く自分を褒めること。その「2」という数字の意味を知り、高みに至る音楽家の探求と熱量に圧倒されました。忘れられないレッスン、三つ目です。
クラリネット宮前和美
アンサンブルが乱れた時
「アンサンブルが乱れた時、皆が自分のせいにして合わせようとしていたら、 音楽が音楽として成り立たないんです。」
日本を代表するオーケストラの、元首席クラリネット奏者の先生から聞いた言葉です。
アインザッツや音程、発音、表現が上手くいかなかった時、皆が皆、自分が原因だと、周りの人に合わせようとしたら、お互いどんどん合わせに入り、とても消極的な音作りになり、その先にある、大切な音楽が生まれません。
逆に、自分は絶対で、自分の正しさを信じ、他人に寄せない頑なな吹き方は、ソリストなら時にあり得ても、作り出される音楽は、アンサンブルとは言えなくなります。
自分に自信を持ち主張しながら吹くことと、自分を疑いながら柔軟に吹くことは、どちらも必要で、どちらかに偏り過ぎても上手くいかなくなってしまいます。
自分を主張することと、人に寄せて合わせにいくこと、
「その二つの間に真実がある。」
二つの間でバランスを取るのは難しく、大抵どちらかに偏ってしまうことが多いけれど、本当のアンサンブルが成立し得る真実がそこにあると。
自己否定と似て非なるもの
何年もかけて修得していくようなことも、超繊細で敏感な相手との高度なアンサンブルのやり取りの存在も、包み隠さずその先生は伝え、さらに周りに合わせることに偏りがちな私の演奏も見透かしていたかのようでした。
この言葉を聞いたのは、私がアレクサンダー・テクニークに出会う前で、上達するには自分の演奏に駄目出しを続けることが必要だと、当たり前のように考えていた頃です。
演奏途中に、ハーモニーや音程などが、許容範囲外だと判断した瞬間、音楽的な才能も耳もテクニックもない、下手な自分が、アンサンブルを乱しているのだと咄嗟に決め、すぐ周りに合わせにいくという習慣が、私の中にありました。
自分を信用せず吹くこと、駄目出しから発生したテクニックの一つです。
やっていることが不健康だとは全く思っていなかったのですが、実際すべきことは、『自分を信じ確実に吹くこと』と、『自分を律し疑い柔軟に吹くこと』の相反することとのバランスの取り方であり、私が実践していた取り組みは、その先生が目指し、現場で実際に考え、実現しようとしていたアンサンブルに於ける柔軟な対応とは、似て非なるものでした。
「2」だけ多く。
日本トップのオケで第一線にいたプレーヤーが、何年も掛けて考え尽くし、気が遠くなるほど色々な方法で本番に挑み、身を持って経験し実感して、辿り着いたはずの、アンサンブルに相対するときの極意や心得、滅多に知ることはできないと思っていたオケマンの音楽の本音。
「その二つの間に真実がある。」とサラッと簡単に発言したように聞こえた言葉の中の極意が、私には手に負えない圧倒的な真意として迫り、心は鷲掴みにされていたのに、次の言葉は、もっともっと思いっきり強烈な色の閃光を放ったような鋭さで、心に刺さりました。
その先生は、講義を続けながら言いました。
誰かと音楽する上で、自分を褒めることと、けなすことどちらも持ち合わせる必要がありますが、それはバランスが取れ均衡を保った五分五分の割合ではありません。
50対50のうち、けなす方を「1」少なくし、その分「2」だけ多く、自分を褒めてアンサンブルをしていくのです。
「2」だけ多く、自分を信じて褒める。
「51褒めて、49けなす。」
「その一生で。」
想像を超えた果てしない探求と熱量
なんで、どうしたら、こんな言葉が出てくるんだろう!
遥か遥か先にいるように思えるプレーヤーなのに、それでもなお現状に満足することなく、終わりなき音楽の旅路を、より素晴らしい方へ進み続け、邁進している。
褒めると対になっている、けなすという言葉には、自分を貶めるようなニュアンスがありますが、自己否定や自己卑下とは全く意味を異なり使うプレーヤーの覚悟があり、想像を超えた果てしない探求と熱量がすぐそこに感じられました。
「その一生で。」という言葉の、 一生そうしていくという信念にも、そして、51対49という数字を選べる繊細さにも圧倒され、何かに書き残しておこうとしなくても、その瞬間で覚えてしまったほど印象的な言葉でした。
アレクサンダー・テクニークの先生のサポート
この心揺さぶられる言葉の大きな影響を受け、「褒める」ことを取り入れて方向転換をしようとしても、思考の習慣は根深いもので、いつでも駄目出しをする自分が出てきました。
どうやって自分を褒めるのを増やし、どうやってけなすことを減らせるのか?
これはまさに、そのあと出会ったアレクサンダー・テクニークの先生たちのサポートなくしては、改善はあり得ません。
褒め慣れていない自分にとって、少しでも自分を認めると、自己慢心になっていはしないか、自信過剰ではないか、自己否定の安全網がなくなってしまうという怖さや、劣等意識からくる自分へ対しての呵責や後ろめたさなど、新たな自分になろうとしているのに、巧妙な手口で、自己否定をする思考は入り込み、それは阻まれてきました。
でも、アレクサンダー・テクニークの先生たちは、私に起きる僅かな変化にいつも気づき、見逃さず、変化が起きた、良くなっている、気づくポイントは今だった、今上達したのにすっ飛ばして次に進もうとした、きちんと上達を認めなさい、とある時には立ち止まり 、考え方のヒントを様々な側面から与えられ、色々な先生に気づかせてもらいながら一年くらい過ごしました。
今でもまだ、自分を褒めるのは苦手ですが、100に近く自分をけなすべきと思っていた以前から考えると、大分割合が変わってきたと思います。
音と同じく、言葉も響く
物事を極めにいこうとする、プロフェッショナルな人の言葉は、時に、人に伝える能力や威力も超一流で、その人が奏でる音楽と一緒で、心に届き、感動を生み、人に影響を与えます。
そして、音楽もスポーツも芸事も経営もありとあらゆるジャンルを問わず、その道の一流の人から聞くある特定の話が、他の分野にも共通し、参考になったり教訓として学べたりする時が多くあります。
この先生の話はオーケストラの管楽器セクションにおける演奏についてでしたが、ほんの些細なことで白黒つけたり、0か100かどちらかに偏ったりした自分になった時にバランスを取ることを思い出したいし、空気を読んで自分が遠慮しすぎたり、誰かに合わせ自己主張をできない時や、逆にこだわりがあるからこそ主張をしすぎたり、一部の正しさしか許せず自分を正当化したりする時に、自分が考えているものとの二つの間に真実があるかもしれないと、柔軟でいたいと思います。
自分を「2」多く褒める。
51褒めて、49けなす。その一生で。
そう低く静かに言う声。
あの時のレッスン室の景色や空気、その先生の声と言葉は今も心に響き続け、もう何年もずっと忘れられません。
クラリネット宮前和美
~アレクサンダー・テクニークセミナーin渋谷~
え?こんなに楽に演奏できてイイの?
開催します!
◆日時:2018年2月25日(日)13:00〜16:00
◆場所:ノナカ アンナホール(株式会社ノナカミュージックハウス6F )
◆住所:渋谷区道玄坂1-15-9
(渋谷駅より徒歩5分)
◆定員:10名(グループレッスン中、個人レッスン10分付き)
◆対象:管楽器、弦楽器、ピアノ、歌、指導者など、年齢問わずどなたでも参加可能です♪
◆受講料:
お一人10,000円
ペアチケット(二人分)18,000円
学生券5,000円
聴講3,000円
◆申し込み:下記ページより受付
https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/012ujjzcqdi6.html
◆ご質問:kazumiyamae.cl@gmail.com
-セミナー詳細-
1.グループレッスン:3時間
アレクサンダーテクニークの基礎を実際に体験(60分程度)し、
カラダの正しい使い方、楽な使い方を三人一組で経験して頂きます。
カラダの仕組みや、動かし方を覚えよう!
更に!マスタークラス形式の個人レッスン(10分程度)も付いてきます!
自分自身はも勿論ですが、
他の奏者の「変化」も「感動」も一緒に学べる、
内容の「濃い」学びがある3時間です。
又、学生の方でグループレッスンにご参加を希望される方には、
半額で学生券をご用意いたしました。
上達したい学生さんを応援します!
2.グループレッスン聴講のみ
上記1.グループレッスンを3時間聴講(見るだけです)できるチケットです。
どんなレッスンか見てみたい!
アレクサンダーテクニークって何?
レッスン受けるのは、まだちょっと・・・
そんな方に、聴講チケットをご用意いたしました。
自分の楽器だけではなく、
色々な楽器のレッスンを聴講する事により、
ご自身の演奏には当然ですが、
吹奏楽部、ピアノ講師等ご指導されている方にも、
大いなる「学び」や「ヒント」があると思います。
3.特典
今回、数ページにわたる、オリジナルの体の仕組みがわかる資料をプレゼント!
目から鱗の演奏のヒントにつながる、解説とイラスト付きの資料です。
セミナー後も見直して練習に役立てられます♪
4.個人レッスンの受付
個人レッスンは随時受付ております。
より深く学びたい方、ひとりでゆっくり学びたい方、人前では恥ずかしい方にオススメです。
セミナー参加者は初回のみ5,000円→500円割引。
※交通費・スタジオ代は別途ご負担いただきます。
詳細はレッスンページをご確認ください。
-よくある質問-
1.レッスンに関して
Q、何か持ち物は必要ですか?
楽器、楽譜(特定の曲やフレーズを見て欲しい方)、メモ帳、筆記用具(必要な方)(譜面台はこちらでご用意します。)を是非ご持参下さい。
Q、マスタークラス形式って何?
個人レッスン希望者がひとりずつレッスンを受け、他の人はレッスンを聴講するかたちのレッスンです。
恥ずかしい!という方も大丈夫です。
セミナーにいらっしゃる方は、全員が音楽家で同じ悩みを共有する方ばかり。
皆で「悩み」「学び」を共有する。という本セミナーの醍醐味でもあります。
もちろんどうしても恥ずかしいから演奏したくない!という方は、聴講だけで参加するという方法もあります。
(本当は、人前で演奏したほうがずーっと大きな学びになりますが・・・)
Q、グループレッスン内の個人レッスンは、何分くらいやってもらえるのですか?
一人あたり10分前後となります。
時間は、若干前後する場合があります。個人レッスンは、10分程度を予定していて多少長くなったり、短くなったりします。(当日のセミナーの進行状況などにより)
その点は、どうかご了承ください。
Q、グループレッスンの見学は、出来ますか?
聴講チケットをご購入いただき、見学していただけます。
3時間3,000円(税込)となります。
2.会場について
会場:ノナカ アンナ・ホール(株式会社ノナカミュージックハウス6F)
渋谷区道玄坂1–15–9
電話03–5458–1521
www.nonaka.com/nonakamh/selmer/index.html
立地のいい渋谷から徒歩5分、クラリネット、オーボエ、ファゴットの皆様にはお馴染みの楽器店、株式会社ノナカミュージックハウス6Fの、アンナホールをお借りできました。
3.セミナーの録画録音について
Q、レッスンを録画、撮影されたくないのですが・・・
レッスンの録画、写真撮影を希望されない場合は、その旨お伝え下さい。お客様の撮影は、一切行いませんのでご安心ください。
Q、セミナーを録音、録画をしても良いですか?
録音、録画はお断りしています。
4.料金、お支払いについて
Q、セミナーに行けなかった場合、料金は返金されますか?
お申し込み後のキャンセルは、お受けできません。お支払い後の料金についても返金は、行いませんのでご注意ください。
Q、Facebookのコメントや電話で申込出来ますか?
申し訳ありませんが、お申し込みはこちら(クリックしてください♪)よりお願い致します。お申込情報の管理上、Facebookコメント欄からのご連絡、メッセンジャー、メール、お電話でのお申し込みは、一切お受け出来ませんのでご了承くださいませ。
5.キャンセルについて
Q、チケットを他人に譲っても良いですか?
ご購入いただいたチケットは、ご本人のみお使いいただけます。ご了承ください。
Q、セミナー申し込み後のキャンセルは出来ますか?
如何なる理由をもってもお申し込み後のキャンセルは、お受け出来ません。レッスン料金および聴講チケットの返金などは、一切出来ませんのでご了承ください。
6.その他
上記を良くお読みいただき、ご理解された上でお申し込みをお願いいたします。ご不明点など有りましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
【忘れられないレッスンシリーズ】
1、◆多くの音楽家が教わってこない、パフォーマンスのこと /0004
2、◆楽譜を見るとき、楽器の眼鏡を掛けていませんか? /0008
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