◆後編 どうすればポジティブ思考で舞台で演奏できるんだろう? /0007

アレクサンダー・テクニークを始めて、脳の仕組みに少し詳しくなりました。そんなことを学ぶことになろうとはかなり想定外だったのですが、神経細胞ニューロンやシナプスは、自分の演奏とその答えに関係がありました。「緊張せずに、楽しく、ベストな状態で本番を迎えたいのに、なぜポジティブ思考で舞台で演奏できないんだろう?」ついついやってしまう、暴飲暴食・夜中のインターネット・無駄遣い・タバコ・お酒など、やめたいのにやめられないこととも、脳の中では一緒です。前回のブログの後編として、どうすればポジティブ思考で舞台で演奏できるのか。カギを握るシナプスってなに?!

クラリネット宮前和美


まず脳の話。(シナプスとニューロン)

 

・物心つくかつかないかの頃、とってもやりにくかった記憶がある、ボタン掛けや蝶結び、髪を結ぶこと。

・中学に入ってから学んだ、色々な方程式の解き方や閃き方、英単語記憶や年号の暗記。

・20数年吹いているクラリネットの奏法、技術。

などなど。

 

これまで人生過ごしてきた、あらゆる生活の中で、小さなことがパッと出来るようになったり、日に日に効率的に、習慣的になったり、年を重ね上手くなったりするのは、人間のどんな働きによるでしょうか。

 

それは、人の脳みその中にある、凄まじい数の、ニューロン(神経細胞)が、上手く情報交換をして、学習したり、運動したりすることによって、起こっています。

1000億個以上あるニューロンは、一対一で繋がっているのではなく、複数と繋がり、信号を流していて、情報の交換をしながら、生存に関わることを始め色々なことをやってのけます。

その情報を交換するニューロンの間の繋ぎ目を、シナプスと言いますが、1000億個以上のニューロンが存在し、さらに複数個所で繋がるため、その情報の通り道はもう天文学的な数字、100兆個以上のシナプスが結び目となり存在するそうです。

まさに地球何周分だとか。

 

シナプスは増加したり減少したり、形が変化したりもするようですが、特徴的なのは、シナプスはより使うことによって、その繋ぎ目が強固なものになり(ミエリン化(髄鞘化))、そうなると神経信号が送られるスピードが、電車で例えると、各駅停車から、特急に変化するくらい、何倍も一気に向上します。

そうやって、学習や記憶、運動機能がよくなり、天は二物を与えると例えられるような抜群な人が出てくるのだろうと、その話を知って想像しました。

 


脳内はスーパーコンピューター

 

さて、シナプスが強固になり、数が多ければ多いほど、伝達が早くて、自動化されて良い、というような感じがしますが、不必要な回路が、強固に繋がってしまったときに、厄介だと思いませんか?

 

前編ブログ(◆ポジティブな人と、ネガティブな人、舞台で何が違う?)に書いたように、緊張することは、物事に対しての個人が選んだ反応の仕方ですが、何度も舞台で緊張するたび、どんどん「舞台に立つ→緊張する」という反応をする経路で、シナプスの結束を高めていると言えます。

脳内は超優秀なスーパーコンピューターなので、自分を守り安全だと思う方を選び、習慣化され特急が開通してしまうと、どうしても、その回路が最優先されます。

 

舞台で考えなくてもいい人の評価、

やらなくてもいい自己卑下、

不必要な反応、

自分への不可能な要求。

 

私が演奏しているとき、あがり症や緊張が起こりやすいのは、これまで20年以上をかけて何度となく迎えた本番の経験、その心構え、準備の仕方、考え方、反応の仕方により、緊張しやすい方へ神経細胞を伝達していくシナプスを、長い時間掛けて、かなり強固に、繋ぎ合わせてしまったからだと理解しました。

緊張せず、できればポジティブに、ベストな状態で本番を迎えたいのに、舞台に上がると、どうしてもこれまでのように緊張して指が震えたり、ネガティブになったりしてしまうのは、脳の仕組みがさせているシナプスの働きのせいです。(正常な働きをしてくれているという点では、「おかげ」です。笑)

 


どうやったらそのシナプスを繋がずにすむ?

 

では、どうしたら、その繋ぎたくない神経回路を繋がずにすむのでしょうか。

 

実は、緊張がいやだからといって、そのシナプスを繋がりを切る方法はありません

緊張を和らげたいといっても、そのシナプスの繋がりを弱める方法も残念ながらないのです。

 

唯一の方法は、今後、繋がっているシナプスでは伝達しないようにしていくこと。

つまり、他のシナプスを繋いでいき、より新しい結び目を強くするために、何度もこれまでと違う方法を試し、新しい神経回路で、新しい習慣を作ること。

そうすることによって、今まで通りやすかった道が、新しい道を使うことによって、いつの間にか使われない通り道になります。

 

自分にとって一番改善したいのは、「あがり症・舞台での悪い緊張」なのですが、習慣がやめられないのは、例えば、暴飲暴食、タバコ、夜更かし、人間関係、お酒、夜中のインターネット、偏食、セールの無駄遣い、悪口、何かの依存……いくらでも身近で具体的なものがたくさんあります。

やめたいのにやめられないという習慣や現象が、脳の中で起こる仕組みと、その習慣をやめる時のアプローチ方法は、私の悩みと共通すると思います。

 

私は、アレクサンダー・テクニークなどをツールとして、その不必要に繋がった、神経細胞のシナプスと心理戦をしているような気がしています。

 


その習慣をしない先に、何が待っているだろう?

 

「その習慣がなくなったら、どんな自分になって、何がしたいのか。」

それが自分を前に動かす原動力となります。

 

その先のことがしたいから、

何度失敗しても、

意識的に選んで、

より建設的になるよう、

無意識からくる習慣というエリアに主導権を受け渡さず、

やりたい方を何度も実行しようとする

 

それが、アレクサンダー・テクニークのディレクションでもあります。(過去記事「ディレクション」

結果がどうなるか、分からないけれど、そうしていく。

生まれてから今まで、新しいことを覚えて、学習してきた時と同じように。

 


もう自分を怖がらせながら演奏したくない。

 

人の学習機能は、80歳までは現役です。

まだ弱く、繋がりにくいパフォーマンスのシナプスだって、周りの回路が強固でも、いつか繋がるはず。

 

もう自分を怖がらせながら演奏したくない。

できない自分に自己嫌悪でめげそうになっても、何回チャレンジしても、その時新しい回路が繋がらなくても、ポジティブ思考と言われる方を選択し続ける。

いつかシナプスが完全に繋がった時、ネガティブな反応を選択し、辛い経験をしていたことをとても懐かしく思い起こし、その時できる最善をし続けてきたと、自分の歴史に感謝できるようになるまで。

 

クラリネット宮前和美

 


 

レッスンを受けてみませんか?
詳しくはこちらをクリック♪

 

 

無料メルマガを登録できます♪
こちらからどうぞ!

2 Comments

  1. いまアカペラをならっています。
    どうしても、うまくできず成長もできずネガティブ思考に陥ってしまい、できないことにだけ目を向けて落ち込んでできないことに悲しんで泣く日々がつづいてます。まわりはものすごくポジティブで明るくとても上手にハモって歌ってます。できない私からするとこれが羨ましい気持ちとなぜできない?とネガティブ思考で凝り固まった思考をほぐして笑顔になりたいのです。
    これを変えてポジティブにまだうまくなくても焦らなくても大丈夫になりたいのです。

    • 深尾 波留香様

      コメントありがとうございます。
      こうなりたい自分や技術に追い付いていなくて落ち込む思考回路に入っていくのはとてもよく分かります。
      それって向上心があるからこそですが、そのエネルギーが、本来アカペラをやろうとしたきっかけ、音楽の楽しさ、仲間がいることなどに直結することが、一番ポジティブになれる方法だと、私はアレクサンダー・テクニークを学ぶようになって気付きました。
      深尾さんにはそういう原点はありますか?

      私には、できないと落ち込む深尾さんとでも一緒に楽しく歌ってくれている仲間がいる、そんな風に見えます♪
      できないと落ち込んで歌うのか、成長過程な自分でも一緒に歌ってくれる仲間がいると思いながら歌うのか、思考回路を選ぶのは自分です。
      すぐには変えられないということは私自身、身に染みているので、少しづつ違う観点から自分を見られるように試していくのがポイントだと思います。

      クラリネット宮前和美

Leave a Reply

Your email address will not be published.