◆「形容詞」で表現しがちな、音楽家の常識をくつがえせ! /0031

 

楽譜に書き込まれた、楽語や表情記号。それをヒントにして、物語や人物、風景、色合いなどを想像をすることは、演奏表現のアイディアとして有効です。でもそのアイディアを、あと少し掘り下げ、もっとパフォーマンスが生きる、演技の世界のアイディアを教わりました!去年(◆多くの音楽家が教わってこない、パフォーマンスのこと)に続き、音楽の世界の常識から離れ、ハッとさせられた、女優であるアレクサンダー・テクニークの先生とのレッスンです。

クラリネット宮前和美


演技の世界と、音楽の世界。

 

演技の世界と、音楽の世界。

芸術というひとくくりにしてしまえば、同じ世界ですが、パフォーマンスにどう関わるかという考えは、私が携わる音楽の世界より、演技の世界の方が進んでいて積極的であるということがわかってきました。

それは、アレクサンダー・テクニークの先生であり女優のキャシー・マデン先生のレッスンを受けて伝わってきて学んだものなので、それを断言できるかは確かではありませんが、私が音楽の世界にいて知らなかったことを、いくつも教わったのでそう感じます。

去年に引き続き(◆多くの音楽家が教わってこない、パフォーマンスのこと)、今年も来日中のキャシーの考え、その中の一つを書いてみます。

 


形容詞、形容動詞

 

私たちは見えない音や音楽を、言葉でどんな風に表現しているでしょうか。

無意識すぎて、それをキャシーに指摘されるまで全く意識していませんでしたが、指摘されてから、本当にそうだと気づきました。

 

『音楽家は、「形容詞」で、音楽を表現しようとしている。』

 

楽語がそれを顕著に表していました。

 

agitato アジタート 激しく
amabile アマービレ 愛らしく
appasionato アパッショナート 情熱的に
brillante ブリランテ 華やかに
cantabile カンタービレ 歌うように
comodo コモド 気楽に、程良く
con brio コン・ブリオ 生き生きと
con espressione コン・エスプレッショーネ 表情を込めて
con fuoco コン・フォーコ 熱烈に
con sentimento コン・センティメント 感情をこめて
con spirito コン・スピリト 元気に
dolce ドルチェ 柔和に、優しく
espressivo エスプレッシヴォ 表情豊かに
legato レガート 滑らかに
leggiero レッジェーロ 軽く
maestoso マエストーソ 荘厳に
marcato マルカート はっきりと
pastorale パストラーレ 牧歌風に
risoluto リゾルート きっぱりと、断固として
scherzando スケルツァンド おどけて
tranquillo トランクィロ 静かに

 

優しい音色、荘厳な響き、華やかなサウンド、寂しげなpp、情熱的に歌う、明るいハーモニー……

 

実は、音楽家が日常使っている表現の考えは、ほとんど形容詞や、形容動詞なのです。

音楽を共有し、言葉で伝えようとしたときに、ごく自然に使い、聞いてきた表現です。

 


「形容詞」と「感情」は、結果起こるもの。

 

でも、キャシーのパフォーマンスの考えでは、この「形容詞」や「感情」は、パフォーマンスのための具体的な動きや具体的な表現の指示をするときには、うまく使えないと言います。

なぜかというと、「形容詞」と「感情」は、何かの結果起こるものだから。

 

例えば「悲しい」という想いは、それが先にあるのではなく、必ず何らかのストーリーがあり、悲しさが生まれたり、悲しみを感じたりするに至っています。

悲しみを生み出す「動詞」をなくして、もしくは、それを考えずして、「セリフ」や「音楽」は生きてこない。

 

【悲しい】

 

心がしめつけられるように悲しいと思ってその一音を奏でるか。

金木犀が大好きだった母の面影を思い出し涙が溢れてしまう、その金木犀の匂いをブレスで嗅ぎ、一音を奏でるか。

 

【暗い、葬送】

 

暗い葬送の場面と知って、カデンツを吹くか。

死者の魂を天国まで音で導いていく、として一音一音カデンツを吹くか。

 

【明るい、楽しい】

 

楽しい明るい恋の歌詞だと思いながら歌うか。

15歳の少女に向かって、恋愛の先輩として恋の経験を語ると思い歌うか。

 

 

【強い、華やか】

 

強い華やかなファンファーレを吹くか。

聴いている人たちに音で敬礼してまわると思い吹くか。

 

 

形容詞のアプローチと動詞のアプローチでは、全く違う音が出てくると思います。

どんな具体的な動きをすれば、その「形容詞」や「感情」が生まれてくるのかに創造性を働かせ、それによってリアルな表現をしていくのがパフォーマンスであり、パフォーマーであるということ。

作り出すストーリーや行動については、何が正しいということは全くなく、自分にとって、次に起こる感情を結果として呼び寄せるもの。

 

 

『具体的な「動詞」を作るのよ。』

 

 


役者が「セリフ」を生み出すように。

 

なるほど。役者はそうやって自分から「セリフ」を生み出しているのか!

 

音楽家は、形容詞に浸ってきたので、慣れていない動詞によって「音楽」を生み出そうとしたとき、多くの音楽家たちも同じく、考え方が感覚や感情に引き寄せられてしまいがちであることに、色々な人のレッスンを聴講し気づかされました。

演奏者も含め、俳優、ナレーター、ミュージカル役者、ダンサーなどの表現者のレッスンで、キャシーはそのパフォーマンスをより生かすときに、ストーリーの中から「動詞」を作り出し、それを使うように提案し、見違えるような音や動きを引き出していきました。

 


楽語や表情記号。

 

楽譜に書き込まれた、楽語や表情記号。

それを見たときに、どんな物語や登場人物がいるのか、どんな自然の風景なのか、どんな絵の具の色合いなのかという想像をすることは、演奏表現のアイディアとして有効です。

でも、そうやって想像したアイディアをあと少し掘り下げて、その感情が生まれるための、動きを作り、その「動詞」を使って具体的に音を出すことに繋げ、その「動詞」を使って演奏する。

それが、結果としてその楽語の表情や表現を生み出す。

 

とても納得できることでした。

今年のGWに、アレクサンダー・テクニークの学校(BodyChance)の合宿があり、キャシーの演劇についてのワークショップをたくさん受け、欧米の演技の世界には、パフォーマンスをメソッドや学問として学ぶ土台があるのだと知り、音楽の世界にはないその考え方は、音楽にも必要で色々取り入れられるものがあると感じました。

今回の話は、ある意味、音楽家の常識をくつがえすような考えで、ハッとさせられたキャシーの教えです。

 

「形容詞」や「感情」は、「動詞」があった結果として起こる。

今後、演奏に生かしていきたいと思います。

 

 

クラリネット宮前和美



アレクサンダー・テクニークセミナー北海道
~え?こんなに楽に演奏できてイイの?

~今回はガッツリ基礎!!

 

 

昨年開催して大好評だった宮前和美先生による
「アレクサンダー・テクニークセミナー」を今年も開催しますよ!

今回は私のリクエストで一番知りたい「基礎」をガッツリやっちゃいます!

構え方、呼吸、姿勢、アンブシュア・・・

今更聞けないことを「みんなで勉強しませんか?」

専門的に演奏されている方は勿論、趣味で演奏している方、学生さん、ブランクさん
どんな方でも受講できます。

勇気を持って、楽しくみんなで学びましょう!

主催者 杉村隆史

 

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●もしかして中1で楽器を始めたとき、先輩からしか教わらなかったですか!?

●本当に基礎ができているか、不安になったことありませんか?

●調子を崩した時に、何を頼りにしていいのかわからずスランプになったことありませんか?

 

楽器を始めた数ヶ月の間に、「ガッツリ基礎」の部分がわかっていたら、
そのあとの成長がどんなにスムーズだったでしょうか!

でも、今からでも大丈夫。

むしろ、いま基礎を見直すことが必要です。

これからの演奏がもっともっと、楽になって、上達のプロセスが見えてきて、

一気に進めるようになる可能性がありますよ!

アレクサンダー・テクニークを使いながら、「ガッツリ基礎」をみんなで見直しましょう!

セミナー講師:宮前和美
(国立音楽大学卒、アレクサンダー・テクニーク教師)

 

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アレクサンダー・テクニークセミナー北海道
~え?こんなに楽に演奏できてイイの?~今回はガッツリ基礎!!

【日時】2018年4月14日(土)、4月15日(日) 11:30〜14:30(3時間)
【場所】ヤマハミュージック札幌店
【住所】北海道札幌市中央区北4条西6丁目3-3六花亭札幌本店4F
【定員】8名(グループレッスン中、個人レッスン10分付き)
【対象】管楽器、弦楽器、ピアノ、歌、指導者など、年齢問わずどなたでも参加可能です
【受講料】
お一人8,000円
学生券5,000円
聴講2,000円

【個人レッスン】グループレッスン終了後【残り数枠
両日とも16:00〜、16:30〜、17:00〜、17:30〜30分単位
定員4
30分5,000円
【申し込み】https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01r2t9zfa515.html

 


2018年4月16日月曜日

室蘭市内にてアレクサンダー・テクニーク個人レッスン会開催

 

●楽器が上達しないとお悩みの方へ

こんな悩みありませんか?●

ハイトーンが出ない。
マウスピースの位置で悩んでいる。
早く唇がバテてしまう。
本番では、自分の身体が他人の身体のように感じてコントロールできない。
本番に大きな不安がある。
音楽に集中することが出来ない。
低音域がうまく演奏できない。
本番で今までのように息が入らなくなってきた。
息の圧力が低く、低音域の音程が不安定
本番になると音が出なくなる。
腕が痛くなり、長時間楽器を持つことが出来ない。
頻繁に音を外すので安定感を持って吹けるようになりたい。
ダブルタンギング・トリプルタンギングの速いパッセージを攻略したい。

なんて、お悩みではありませんか?

室蘭市での開催は、初めてです!

2018年4月16日月曜日・室蘭市内にて、クラリネット奏者でアレクサンダー・テクニーク講師の宮前和美さんの個人レッスンを行います。

「もっと楽器が上手になりたい!」という音楽が大好きな方、いつもは東京でしか受けられない宮前和美さんのレッスンを受けられるチャンスです。

オーケストラ、吹奏楽関係者の方、音楽教育に携わっている方、自分の音楽にアレクサンダー・テクニークを活かしてみませんか?

日時
2018年4月16日(月曜日)残席2
9時00分〜9時45分 【満席】
10時00分〜10時45分 空席あり
11時00分〜11時45分 空席あり
13時00分〜13時45分 【満席】
14時00分〜14時45分 【満席】

場所 室蘭市内(お申込者に場所をご連絡いたします。)

参加費
個人レッスン 45分
8,000円

お申込み
http://basil-at.link/2018/02/22/miyamae/

お申込み完了後、お振込先をご案内させていただきます。

今回は、管楽器・弦楽器・声楽の方限定となります。

【講師】宮前和美(みやまえかずみ)
クラリネット奏者、アレクサンダー・テクニーク教師

 

 


アレクサンダー・テクニークセミナー北海道

-よくある質問-
1.レッスンに関して
Q、何か持ち物は必要ですか?
楽器、楽譜(特定の曲やフレーズを見て欲しい方)、メモ帳、筆記用具(必要な方)(譜面台はこちらでご用意します。)を是非ご持参下さい。

Q、マスタークラス形式って何?
個人レッスン希望者がひとりずつレッスンを受け、他の人はレッスンを聴講するかたちのレッスンです。
恥ずかしい!という方も大丈夫です。
セミナーにいらっしゃる方は、全員が音楽家で同じ悩みを共有する方ばかり。
皆で「悩み」「学び」を共有する。という本セミナーの醍醐味でもあります。
もちろんどうしても恥ずかしいから演奏したくない!という方は、聴講だけで参加するという方法もあります。
(本当は、人前で演奏したほうがずーっと大きな学びになりますが・・・)

Q、グループレッスン内の個人レッスンは、何分くらいやってもらえるのですか?
一人あたり10分前後となります。
時間は、若干前後する場合があります。個人レッスンは、10分程度を予定していて多少長くなったり、短くなったりします。(当日のセミナーの進行状況などにより)
その点は、どうかご了承ください。

Q、グループレッスンの見学は、出来ますか?
聴講チケットをご購入いただき、見学していただけます。
3時間2,000円(税込)となります。
2.会場について
ヤマハミュージック札幌店
北海道札幌市中央区北4条西6丁目3-3六花亭札幌本店4F

3.セミナーの録画録音について
Q、レッスンを録画、撮影されたくないのですが・・・
レッスンの録画、写真撮影を希望されない場合は、その旨お伝え下さい。お客様の撮影は、一切行いませんのでご安心ください。
Q、セミナーを録音、録画をしても良いですか?
録音、録画はお断りしています。

4.料金、お支払いについて
Q、セミナーに行けなかった場合、料金は返金されますか?
お申し込み後のキャンセルは、お受けできません。お支払い後の料金についても返金は、行いませんのでご注意ください。
Q、Facebookのコメントや電話で申込出来ますか?
申し訳ありませんが、お申し込みは本ページよりお願い致します。お申込情報の管理上、Facebookコメント欄からのご連絡、メッセンジャー、メール、お電話でのお申し込みは、一切お受け出来ませんのでご了承くださいませ。

5.キャンセルについて
Q、チケットを他人に譲っても良いですか?
ご購入いただいたチケットは、ご本人のみお使いいただけます。ご了承ください。
Q、セミナー申し込み後のキャンセルは出来ますか?
如何なる理由をもってもお申し込み後のキャンセルは、お受け出来ません。レッスン料金および聴講チケットの返金などは、一切出来ませんのでご了承ください。

6.その他
上記を良くお読みいただき、ご理解された上でお申し込みをお願いいたします。ご不明点など有りましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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【講師】クラリネット奏者、アレクサンダー・テクニーク教師 宮前和美(みやまえかずみ)
【プロフィール】
国立音楽大学音楽学部器楽学科クラリネット専攻卒業。洗足学園中学高等学校非常勤講師助手。クラリネットを武田忠善氏・生島繁氏ほかに師事。2013年秋よりアレクサンダー・テクニークをバジル・クリッツァー氏ほかに学び、各セミナーでアシスタントを務める。演奏活動のかたわら、2017年5月アレクサンダー・テクニーク教師正式資格取得。日本国内在住の数少ないクラリネット奏者のアレクサンダー・テクニーク教師となる。昨年4月に開催されたヤマハミュージック札幌店でのアレクサンダー・テクニークセミナーでは、数十名が参加し大好評。

 

 

 

 


 



 


【忘れられないレッスンシリーズ】

1、◆アンサンブルが乱れたら、「2」だけ多く自分を褒めること。/0009

2、◆多くの音楽家が教わってこない、パフォーマンスのこと /0004

3、◆緊張しに行くんじゃない。「好きなことをしに行くだけだよ。」 /0010

 


『キャシー・マデン著書』

『キャシー・マデン著書 「オンステージ・シナジー~演技者のためのアレクサンダー・テクニーク実践」』(邦訳未出版)

 

 

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2 Comments

  1. ATには演劇の考え方がベースにありますよね。よく「相手を招待する」と言いますが、それも演劇から来た考え方かなと思います。
    スタニスラフスキーシステムやメソッド演劇など、演劇の考え方をセリフを持たない器楽に応用できないか、興味があって調べています。熟達した奏者ほど、思考している内容が音程やフレージング、奏法についてイメージが強すぎるのか、”自分という役”の存在、いろんな役、行動があっていいという多様性を許す雰囲気がぽっかりと抜けているような気がします。

    • hirokihasegawa様
      コメントありがとうございます。
      もう器楽との応用について調べていらっしゃるんですね!!
      おっしゃる通り「招待する」「招く」というものが、スタニスラフスキーシステムなどの演技理論が元になっているのかもしれないと、最近別の方にも伺ったばかりでかなり興味を持ったところでした。
      確かに専門性を深めていく方向が、日本ではより楽器の専門家という傾向が強いのかもしれないですが、音楽家の中には、何色もの音色を使い分け、音であたかも何役も演じたり、セリフをしゃべったりするような人もまたいて、そんなプレーヤーの演奏を聴けたときには本当に感動します♪

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