◆道具にこだわる。【マウスパッチ編】 /0036

「リードがない!」というセリフは、リード楽器奏者の合言葉のようなもの。調子が悪い原因は、リードのせい?それとも自分のせい?それとも道具のせい?クラリネット吹きにとって、リードとマウスピースとマウスパッチの、小さな1mmの道具の世界にこだわってみると、全然違う吹奏感の世界が広がります。そう言えば、先生によくこんな風に言われたのを思い出しました。女子は化粧をして、ほんの1mmのアイラインの引き方、口紅の乱れ、マスカラの付け方にあれほど神経を使うのに、楽器の道具の微妙な違いには気を使わないのか!!と。たった今思い出されて、ニヤッとしてしまいました。

クラリネット宮前和美


リードの悩み

最近開けたリードの数箱、どれも全滅。
吹きにくい。
全然鳴らない。
リードの悩み、季節の変わり目だからしょうがないか。
いや、まとめて購入してから一年以上缶に入れて保管したまま放置していたからか。
リードの仕入れの回転が早い楽器店で買って、すぐ開けることにしたほうが良かったか。
それとも、今回は毎日新しいリードを吹く時間がなくて、デイリーではなく、数日開けながら育てたからなのか。
なんにせよ、ここまでどのリードも吹けないってのはちょっと問題だ。

リード楽器奏者には切っても切れないリードとのお付き合いである。
一度選んだ後、変化が少ないので信頼できるという意味でも、最近流行りのプラスチックリード(レジェール)も併用して使っている。
でも、最近は良かったはずのレジェール自体も、雑音がするし、反応も、鳴りも、重たくなった気がする。

レジェール 樹脂製リード シグネチャーシリーズ ヨーロピアン


結局練習時間が足りてない私の責任か。
そうやって、リード楽器奏者はどんどん調子が悪い、という状態に陥っていく。
リードがないからダメなのか、自分の練習時間・質の問題か、マッピが劣化してきたのか、楽器の調整か、奏法が悪いのか、その他の原因があるのか。
なぜ自分の調子が変化しているのかという起因を、自分でどう判断し導くかによって、「調子が悪い」という状態に関して早く抜け出せるかが決まる気がする。
大きく分けると自分起因か、道具起因かの判断の正確さ。

さて、今回の私の場合は、リードに問題があると踏んでいた。
ケーンのリードが急に鳴りにくくなってきた。新しいリードの箱を開けてもどれもダメ。
過去にそういうことがあったから。
でも、遠くで警告ランプが薄っすらと灯っているのに気づいたのは、レジェールさえも同じように鳴りにくいということが今までと違ったから。もしかしたら他の何かが原因なのかも?とうっすら直感めいたものの声がそうやって聞こえたけれど、ここ最近の「練習時間が足りない」という大きな真っ当な理由の前に、全然気に留めずにいた。

そして今日、何気なく、マウスピースを掃除して、マウスパッチが最近少しズレてきているのに意識が向き、貼り替えてみようと思い立った。

私は歯並びが悪いので、過去、マウスパッチに関しても色々試してきた。
薄いのがいいのか、厚いのがいいのか、どのメーカーがいいのか、貼らないほうがいいのかという一般的なものから、歯並びが悪い所を平均的に当たるように高さを変えてみたり、少し斜めに貼ったり、前歯を止められるように二重にしてみたり。色々切ったり貼ったり工作をしてきた。

直近で変えたのは確か、2.3ヶ月くらい前。
思い切って改造してきたものをやめ、ノーマルにバンドレンの透明なものをそのまま貼り付けた。それでも左の歯はマウスピースのギリギリの所に当たってしまうから、少し斜めにして直接歯がマウスピースに当たらないようにして。
以外と滑らず吹けると知って、そのまま吹いてきたけれど、少しづつマウスパッチがズレてマウスピースの先端の方に上がってきたのだった。

バンドーレン マウスピース・クッション 0.35mmクリア

貼り替えよう。

几帳面な人は、きっとマウスピースのギリギリ先端と同じ高さにピッタリ貼り付けると思うけれど、それはリードを振動させる上であまり良くないというのは、きっとシングルリード界では常識である(と思っている)。


特に中高生は、歯でマウスパッチに穴が開いて空気が入っても、粘着力がなくなってビラビラさせていても、リードとマウスピースをまっすぐ見た時に、リードよりマウスパッチ上に見えるくらい上に貼っていても、なーーーーーーんにも気にせず吹いていることがある。
一枚100円、200円、ケチらず付け替えろー!
と言いたいのは、過去中学生、高校生でそうやって放置していた経験がある私だからでもあるのだけれど。

さて、なので、マウスパッチをつける位置というのは、
「マウスピースの先端より、1〜2mmくらい下につけましょう。」
というのが定説であるし、教えるときには必ずそう言っている。

そう考えると、私のマウスパッチも結構上に上がってきてしまったので、今回またズレてしまうことを見越し、ケチケチ精神が働いて、目分量、気持ち的には思い切って、3mmくらいは下につけてみようと思い至ったのであった。

さて、貼り替え終了。
気持ち新たに、さっきまで練習していたリードをつけて、練習再開。

あれ?
鳴り方が違う。
これ、同じリードだっけ?もしかして間違えた?

いやいや、間違えなくさっきまで吹いていたリードだ。

あれれ??
何だか良く鳴るようになってる??

へー?!
他のリード試してみよっ。

あれ?これも吹きやすい。

まさか!
育て中の、吹きにくい、鳴りにくいと思っていたリードを順番に吹いてみる。
ガーーーーン!!!
10枚中10枚ダメと思ってたのに、明らかに吹けるリードが存在してる!!!!!!

なんと、マウスパッチの位置をほんの少し変えたら、吹けるリードが増えた!
なんてこったい。
季節のせいでもない、リードの箱の運のせいでもない、私の練習のせいでもないじゃん!
あぶなーーー!!!
このリード達は見限って、危うくもうすぐお払い箱に行かせるところだった!

その日の個人レッスンで、高校生のマウスパッチも、早速チェックした。
やっぱり几帳面に、かなりマウスピースの先端近くに揃えて貼っていた。
今までだったら、上に出ていなければいいか、と生徒さんの道具を見過ごしていたけれど、そんな私の話で誘導して、自ら剥がして、付け直してもらったら、吹きながら目がビックリし始めた。ちょっと違うリード試します、といって今まで彼女にとって吹きにくかったから、しまっていたバンドレン青箱リードを出してきた。全然息が入らなかったのに、普通に吹ける!!と言って驚いていた。

バンドーレン B♭クラリネットリード トラディショナル 3-1/2


あぁーーーーーーあーーーーー!!!
そんな小さな1mmの世界に、こんなに吹きやすい世界が広がっている。
くっそー。
ショック。

ぜひとも試してみてほしい。
1mmづつマウスパッチの位置をずらして、吹き心地の検証を。
確実に1mmづつの変化で、吹奏感が変わってくる。

私はここまで違いがあることが面白くて、1mmごとの吹奏感の違いや音色を何通りも試して、自分のベストポジションを決めた。

 

(マウスパッチの厚さによってもポジションが変わるので、それぞれ個人個人で是非試してみてください♪)

クラリネット宮前和美

 


【道具にこだわる。】シリーズ。

第2弾以降はこちらです!

 

◆道具にこだわる。【親指かけ編】 /0043

◆道具にこだわる。【マウスピース編<1>】


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