
さてみなさん、今使っているマウスピース、何年目ですか?だいぶ経ってますか?もしかして、マウスピースのピカピカのコーティングが落ちて、リガチャーの跡がつき、くわえているところが白くなり、メーカーのロゴや文字はすっかり読み取れなくなっているとか?最近合うリードがない、調子が悪い、息が入りにくい、楽器が鳴らないとか、もしかして感じてたりします?それって、実はそのマウスピースのせいかもしれませんよ。ということで、マウスピースに知らぬ間に忍び寄る「劣化」ってコワイんです、というのが今回の話です。
クラリネット奏者、アレクサンダー・テクニーク教師 宮前和美
そのマウスピース、何年目ですか?
さてみなさん、今使っているマウスピース、何年目ですか?
だいぶ経ってますか?
もしかして、
・マウスピースのピカピカのコーティングが落ちて、
・リガチャーの跡がつき、
・くわえているところが白くなり、
・全体的には黄色味が出てきて(マウスピースを久しぶりに洗うと特にこうなりますね。)、
・中を覗くと、汚れか劣化で白い筋が削った凹凸につき、
・メーカーのロゴや種類の印字の文字はすっかり読み取れなくなり、
・精巧な作りでくっきりカットされていたはずのティップレールやテーブルは、面取りしたように丸みが出てきている、
とか?
最近合うリードがない、調子が悪い、息が入りにくい、レスポンスが悪い、楽器が鳴らないとか、もしかして感じてたりします?
図星です?
実は、それって、そのマウスピースのせいかもしれませんよ。
はい。
ということで、長年愛着を持っていて、気に入っていたはずのマウスピースに、知らぬ間に忍び寄る「劣化」ってコワイんです、というのが今回の話です。
マウスピースってどう劣化する?
プレーヤーの中には何年も同じマウスピースを使っている方もいるし、伝統ある外国のオーケストラでは楽器もマウスピースも歴代奏者が何代にも渡って使うこともある(あった?)らしいですね。
でも【マウスピース編<1>】で書いたように、マウスピースで一般的に使われているエボナイトという素材は、柔らかく変化しやすい材質でもあるので、傷つけなくてもだんだん変化していくことは残念ながら避けられません。
例えば、
リードをセッティングして何度も擦れることによって。
下唇が、リードとマウスピースを押さえつけることによって。
リガチャーのネジで締めることによって。
唇の温度や、息を吹き込んだ熱によって。
マウスピースにスワブを何度も通すことによって。
などです。
それって、演奏している側の問題ではなく(スワブはやめた方がいいと思いますが。)、吹いていれば必然的に起こってしまうことなんです。
知ってました?
吹き手の柔軟さが、逆にデメリットになる。
この、不可抗力な、緩やかな変化と言う点では、ある現象と似てると思いませんか?
そう、吹きやすいお気に入りのリードが一枚あった場合、毎日お気に入りのリードを吹き続けて、古いリードになってもずっとお気に入りという、初心者にあるあるな現象。
毎日吹いているうちにリードの方は少しづつ消耗し、最終的につまって鳴りにくい状態に変わっているのに、いつまでも変わらずいいリードだと思って、鳴らないリードにどんどん吹き手が合わせてしまう。
むしろ良いリードの方を吹きにくいと言うくらい、悪い変化に自分が合わせてしまっている中高生を見かけます。
リードへのこだわりも話し始めるとながーーーーーくなりますが、楽器を毎日吹いているとほんの少しづつの道具の変化は気づきにくく、健康的な鳴らし方や奏法を知らぬ間に見失うことが起こりえます。
それにリードと違い、マウスピースは数ヶ月、数年越しでも変えないので、マウスピースの変化の見極めはなおさら難しく、なんだかレスポンスが悪い、なんだかリードが見つからない、なんだか鳴らないと、原因不明のスランプに陥るってことになりかねない。
だからマウスピースに知らぬ間に忍び寄る「劣化」ってコワイんです、という切り口が今回のブログです。
なら、マウスピースの寿命って、どれくらいなの?
日本ではあまりメジャーではありませんが、マウスピースを調整(リフェイスという作業)する職人さんがいます。
その職人さんが、このくらいの期間で劣化が進むのだろうと判断できる言葉を、パイパースのインタビューで答えていました。
(https://ramonwodkowski.blog/ 海外でマウスピースの調整がどのくらい一般的なのかはわかりませんが、こちらはパイパーズでインタビューされていた方のHP。日本でも、サックスではジャンルによってビンテージが好まれるのでリフェイスもされるようです。日本にも少ないですが職人さんはいらっしゃいます。私自身はリフェイスというものをしたことがありませんが、リードの接点であるティップレールやテーブルの歪みやフェイシングの左右のバランスを整えてもらえるのなら、出てくる音は多分良くなるだろうなと思います。先日落としたマウスピースが蘇るかどうか試してみようかな……。 パイパーズ2017年の特集参考。)
1年半から2年くらいを目安に調整した方がいい。
調整をした方がいいということは、マウスピースの状態は、そのくらいで変化・劣化が顕著になってしまうということ。
某有名吹奏楽団で活躍している先輩プレーヤーは、半年するとマウスピースが変わってくるので、新しいものに必ず買い換えると言っていました。
そしてインタビューでは、
楽器を吹いていないときはマウスピースからリードを外し、ダメージや摩擦を受ける要因をなくすことをお勧めしたい。
とも。
そんな風に言うレベル!!!
私はそれを意図したわけではないのですが、楽器の変色防止と(エボナイトは硫黄成分が入っているので、楽器のケースの中に新しいマウスピースを一緒に保管すると、銀メッキであるキーを化学反応で変色させてしまいます。新しいマウスピースは半年くらい別に保管をした方がいいと言われますが、やはり半年経過くらいで材質の変化があるということでもありますね。)、リガチャーの変形防止という理由で、マウスピースはマウスピースケースに入れて別に保管していましたが、リードをずっと当てて保管していることは、マウスピースの磨耗の原因になるんですね。
保管の状態がマウスピースに影響するとは、そのインタビューを読むまで知りませんでした。
なので、こんな意識が必要です。
半年、とまでいかなくとも、数年同じマウスピースを吹いていれば、知らぬ間に変化しているものと知っておくこと。
気づかぬうちに、マウスピースとリードの接点の形状も内径もどんどん変化し、振動の仕方が変わっているのです。
なので、
慣れ親しんだ相棒(マウスピース)に見切りをつける技術
と、
新しい相棒を探す技術
が必要です。
リフェイスという作業をせずに、一定期間経ったときのマウスピースとの別れと出会いのスキルですね。
私の師匠は、「新しいマウスピースにしたら以前のマウスピースは絶対吹かない。」と言っていました。
移行期間は作らずに、潔く決断し、割り切って早く新しい道具に慣れていく、という信念も一つのスキルだと思います。
対処法。
私にとっての【慣れ親しんだ相棒に見切りをつける技術】は、
・予備の新品マウスピースを買っておく。
・ときどき楽器店で試奏する。
ことです。
予備で新品マウスピースを買っておき(先日の落下事故のように……何かあったときのためも兼ねて、何本かストックがあります。プレーヤーによっては本番用のマウスピースと練習用マウスピースを使い分けていることもあります。)、それをときどき吹いてみたり、たまに生徒用のマウスピースを選ぶ流れで、楽器屋さんで試奏し、現役のマウスピースやリガチャーの道具の劣化や変化を掴むようにしています。
特にホールなど広い場所で比べられるようであれば理想。
あれ?もしかして今使っているものより吹きやすいのかも?
遠鳴りしているかも?響いているのかも?
という感覚が生まれるかどうかをチェックします。
マウスピースでギャンブル?
そして、【新しい相棒を探す技術】である、マウスピースの選定については、その話題だけで尽きないくらい奥が深まってしまうので、基本中の基本だけお伝えすると……
吹かずに購入するってことがないように!
ということです。
今は手軽なネットショッピングという文化もありますが、マウスピース・リガチャー・楽器は、吹かずに買うなんてNG!!!!!!!
種類によっても傾向は全然違うし、同じものでも、一本一本個体差があります。
同じ種類でも色々な職人さんが仕上げていて、その人のマークが刻印されているのを知っていますか?(写真はバンドレン社のマウスピース)
こんな感じのかわいいロゴが刻印されてます。(よければご自身のマウスピースにどんなマークがあるか見てみてくださいね。)
中にはこのマークの職人さんの手がけたマウスピースがいい、と言うくらいこだわる人もいるんですよ。
近くに楽器屋さんがないなど、環境が難しくさせるのなら、楽器屋さんには有名な先生やプレーヤーが選んだ「選定品」があるので、それを取り寄せるなどして購入すること。
小学生の初心者でも、良し悪しは自分で分かるくらい違うものなので、購入するときは楽器店で必ず試奏しましょう!吹かずに購入するのはハイリスクのギャンブルと例えてもいいくらいです。
まとめ。
ということで、長らく使っているマウスピースで吹いている場合、劣化が起こって吹きにくくなっている可能性があることを知っていただきたかった、道具にこだわる。【マウスピース編<2>】のお話でした!
要所要所マニアックだなと思いながらも、何か参考になれば幸いです♪
クラリネット奏者、アレクサンダー・テクニーク教師 宮前和美
道具にこだわるシリーズ
マウスピース編<1>、親指かけ編、マウスパッチ編です。
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