
車を運転していて、アイディアが急に閃き、早く楽器が吹きたくなりました。アレクサンダー・テクニークをやっていて不思議なのは、全くジャンル違いのことにも、一つのアイディアを共通して使えてしまうことです。自宅に向かう高速道路の車の運転で使った『リーディングエッジ』というアイディアから、理想に吸い寄せられるような音が現れました。その『リーディングエッジ』ってなに!?
クラリネット宮前和美
高速道路で、運転中でした。
私はそのとき、一時間以上車を運転し、高速道路を走っていました。
交通状況はその場になってみないと分からないものですが、その時はかなり不規則な道路状況でした。
急に時速60km位に落ちてしまうような渋滞が起こったり、100km位で飛ばせてしまうくらいの流れが出たり、交通状況が安定せず読めませんでした。
車が増えたり減ったりすることによる、スピード感や前後左右の車間距離の取り方など、目まぐるしい変化に影響され、緊張感もあり不安定な気持ちで運転していました。
『動きの先端』
そんな中、車を運転する時間はまだまだあるからと、その環境で、途中からアレクサンダー・テクニークを使ってみることにしました。
そのアイディアは、『リーディングエッジ』。
日本語にすると、『動きの始まり』や、『動きの先端』と訳されます。
一番始めにどこから動き出すのかを決め、その最短経路を確認してそこを通るようにしてみること。
例えば楽器を構えるときに、その動き出しはどこかと考えたり、どんな放物線を描くのか想像して楽器を動かしてみると、構えは動きやすいだろうか、その構え方で吹いてみると音が変わるだろうかと試してみることです。
もうきっと楽器を構えることなんて、何万回とやってきたと思いますが、習慣化されて何も考えずにやっている行動に対して、思考の整理をし、動きに変化を促すアイディアとも言えます。
高速道路の車の運転でいうと、『リーディングエッジ』は何だろう?
さて、そんな『リーディングエッジ』を、高速の運転中に使おうと、私はその時考え始めました。
【1】 まずは車を運転することに役立つ、動きの始まりの場所はどこだろう?
ハンドルを握る指先?、アクセルを踏む足?、足の爪?、タイヤ?、道路に引かれているいつまでも続く車線?、前を走る車?、パーキングや料金所?、他に何があるだろう??
【2】 そして、そのどれかが先導して動くのかを決め、それを車の動きの中心にしてみたらどうなるだろう?
色々考えて思いついた場所から始動するとして、その状態で運転してみたら、どんな違いがあるんだろう?興味と探究を目的にして、何種類も試してみます。
【3】 今までの自分の癖やパターンを起こさずに、新しい動作を起こすことになります。
どれも動きの先端になるなと思いながら、考えの遊びをしながら運転していましたが、最終的には、目的地の自宅をリーディングエッジにして、安全にゆっくりでも家に向かって単純に到着すれば、目的達成かなぁと思ったとき、本当に面白い変化がありました。
今までの渋滞や、前後左右の車の流れが、一気に大きい範囲で捉えられて、全部が自宅へ向かう行動の中の出来事になり、周りの車の流れを掌握しながら、自分のペースが急に確立されて運転できるようになったのです。
今まで運転をして感じたことがない、過信とはまた違う、確信のような、このまま安全に運転できそうという、不思議な安定感が急に生まれました。
それなら、楽器でもその考えが有効かもしれない!?
自分が触ったり見たりしているものを動きの始まりにするという発想以外に、目に見えないものを、もっともっと大きな目的にして、行動の先導(リーディングエッジ)にしたら、こんなに大きな推進力に変わることもあるんだ?!
ということはもしかして、目的地を自宅にした時の大きな変化は、自分が演奏することにも共通するかも?!
自分が楽器を吹く時に、「なぜ自分が演奏するのか」という意味や目的がどの瞬間も続いて、それが演奏することを先導すると思って楽器を吹いてみたら、どうなるんだろう?!
例えば、
今この瞬間のロングトーンは、数日後の演奏会のソロに繋がっている。
今このスケールは、私の数年後の演奏活動に繋がっている。
今この一音が、私の目指す理想の音楽や音を奏でる音楽家になることに、そのまま繋がっている。
今の私は、将来の理想の音楽を奏でている自分と繋がっている。
思いついてみて、「きっとこのアイディア上手くいく。」という確信があり、早く楽器に触りたくなりました。
家に着いてから、実際そうやって吹いてみたら、予想通り全然自分から違う音が出てきました。
何のために、この練習をするのか?その問いと似ているようで、けれどもっと大きく、もっとエネルギーに溢れて理想に吸い寄せられるような、音の違いが現れました。
言葉や考えの側面が変わると。
私にとって、このリーディングエッジは、アンブシュアに使ったり、楽器の構え方に使ったり、自分の進路や計画をよりクリアにする考えの方向として使ったり、色々応用し、まだまだ楽しく模索中です。
言葉や考えの側面が変わり、印象が変わることで、微細に(時には劇的に)、何らかの変化が起きるということが、アレクサンダー・テクニークではいつもとても不思議で興味深いです。
この動きを先導しているものは何なのか?
この音の出発点(もしくは到達点)に何があるのか?
「今の私の音が、将来の自分の音を導く。」
「将来の自分の音が、今の私の音を導いている。」
似ているようで、違う音が出てくる不思議。
演奏の最先端は、自分の音なのか、それとも、将来の自分の音なのか。
思考や意識の柔軟体操のような感じですが、『リーディングエッジ』というアイディア、とても面白いので、興味が湧いた方は色々な場面で試してみてください♪
上手くいったアイディアなどもお待ちしています♪
クラリネット宮前和美
Leave a Reply